2016年7月26日、相模原の障害者施設「津久井やまゆり園」で障害を持った男女19人が元職員に刺され亡くなりました。この事件についてパンジーの当事者は次のように語っています。「大きなショックをうけています。犯人は、障害者なんていなくなればいいんや、と言っていたそうですが、障害者は生きていたらあかんのか、腹が立ちます。殺されるためにうまれたわけじゃない。くやしいです。」
事件が起こった日から、私たちは何をしなければならないのかを問い続けました。その過程で、知的障害を持つ人たちの置かれている状況やくらしが、社会にあまりにも知られていない事に気づきました。
2016年度は、タイムリーに誕生した「パンジーメディア」インターネット放送を通じて、私たちのことをもっと知ってもらうために、情報発信に力を入れてきました。幸いにもNHKのハートネットで紹介される機会があり、パンジーで生き生きと活動している人たちのことを伝えることができました。これからも私たちは社会に向けて発信をしています。
さて、インターネット放送は2016年9月からスタートし、毎月欠かさず番組を作っています。
この番組を作る中で、私は思わぬ変化に目を見張ることになりました。当事者の表情や行動が変わっていったのです。何がそうさせたのかを考えたときに「役割を持つ」こととは何かということに行き当たりました。これまで創思苑では、当事者が「役割を持つ」ことを大切に考えてきたつもりでした。しかし、当事者のメディアの中での役割、例えば、プロデューサー、カメラマン、キャスター、出演者、コメンテーター等を見たときに、今までの「役割」とは違うものを当事者たちが見つけていったことを感じました。
もう一つメディアを通じての発見がありました。職員が映像を見ることによって当事者の人となりに触れるチャンスとなり得ること、当事者の可能性を感じることができるということです。例えば、職員は『私の歴史』という番組を通じて、今まで語られてこなかった当事者の人生を知ることになります。0コンマ何秒といった映像の中に当事者が見せる表情や行動から読み取れることは何かを考えることができます。これらのことがきらめく宝石のように見えてきたのです。
これらメディアの活動が、障害者と健常者の間に存在する見えない垣根が低くなり、相模原事件のようなことが起こらない社会の実現につながっていくのだと考えています。
パンジーメディアの母体でもあるクリエイティブハウス「パンジー」は、知的障害を持つ人たちが、どんなに障害が重くても地域で普通に暮らすこと、を支援するために作った事業所です。人の思いを創る場にしたいとの願いをこめて「創思苑」(そうしえん)と名づけた社会福祉法人が東大阪で運営しています。
1993年に運営を開始して以来、さまざまな活動を試みてきました。パンジーの開始から23年がたった現在は、4つの拠点事業所と26ヵ所のグループホームなどを運営しています。パンジーとともに人生を歩んでいる知的障害を持つ人は、現在100人を超えています。